4.4. 科学のプロセス : 抗生物質耐性菌はどのようにして生じるか
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細菌の中には、ヒトの免疫細胞の細胞膜をこわして病気を引き起こすものがある
一つの例は黄色ブドウ球菌 Staphylococcus
これらの細菌は皮膚や鼻腔に普通に見られ、通常無害であるが、時に増殖して拡がり、いわゆる「ブドウ球菌感染症(staph infection)」を引き起こす
ブドウ球菌感染症は病院で起こるのが典型的で、手術時の感染や肺炎、あるいは「壊疽性筋膜炎(flesh-eating disease)」のような生死に関わる重篤な状態に至らせる
ほとんどのブドウ球菌感染症はメチシリンのようないくつかの一般的な抗生物質で治療できる
しかし、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)として知られる、黄色ブドウ球菌の中でも特に危険な菌株はこれらの抗生物質が効かない
最近ではMRSA感染がより一般的になりつつあり、病院以外でも起こっている
2007年に、米国国立衛生研究所(NIH)の科学者達が致死性のMRSA株を研究した
観察
彼らは他の細菌がPSMというタンパク質を使って、ヒトの免疫細胞の細胞膜に孔を開けてその機能を失わせるという事実を出発点にした
疑問
その観察事実によって、PSMがMRSAの感染の一因なのかどうか
仮説
PSM産生能のないMRSAは通常のMRSA菌よりも致死性が低いであろう
実験
7匹のマウスを通常のMRSA菌に感染させ、8匹のマウスを遺伝子工学の方法でPSMをつくれないようにしたMRSAに感染させた
結果
3日後、通常群はすべて死んでいたが、PSM産生能のないMRSAに感染した8匹のうち5匹は生存していた
電子顕微鏡で観察すると、死んだマウスの免疫細胞の細胞膜には孔が開いていた
研究者たちは通常のMRSAは膜を破壊するPSMタンパク質を使うが、他の3匹のマウスにはPSMがないにもかかわらず死んだので、他にも要因があるに違いないと結論づけた
→4.5. 核とリボソーム : 細胞の遺伝的制御